2006年08月27日

古代ローマの日常生活

古代ローマの日常生活
ピエール グリマル(著), 北野 徹(翻訳)
白水社 (2005-03)
¥ 999
ISBN:4560508852

ローマの建国の頃からセウェルス朝の頃までの約1000年間を4つに区分して、 各時代の日常生活の様子をコンパクトにまとめている。
住宅、衣服、食べ物のこと、家族制度のこと、子供の教育の様子、職人の仕事の ことなど取り上げる内容は多岐にわたっており描写も具体的でわかりやすい。

共和政ローマの貨幣についての記述があるのは、ローマコインファンとしては素直にうれしい。
しかし、「ローマが最初に銀貨を発行したのは紀元前211年」という記述が 訳注にあるのは何かの誤りだろう。細かいことではあるが、紀元前211年は「最初のデナリウス銀貨が発行された年であり、 銀貨はもっと古く紀元前280年頃から発行されている。

投稿者 augustus : 2006/08/27 11:00 | コメント (0) | トラックバック (3)

2006年08月05日

碑文から見た古代ローマ生活誌

碑文から見た古代ローマ生活誌
ローレンス ケッピー(著), 小林 雅夫, 梶田 知志(翻訳)
原書房 (2006-07)
¥ 2,625
ISBN:4562040262

古代ローマ人がその長い歴史的歩みの中でつちかってきた「碑文」という文化、そして碑文研究を通じて古代ローマ世界の再構築を試みる研究者たちの活動を、古代ローマ史・碑文学研究を専門としない人々、大学の学部学生を含めた一般の人々に、広く認知し、理解してほしいという意図のもとに書かれた啓蒙書です。(訳者あとがきより)

言うまでもなく碑文は古代ローマについての第一級の資料であるが、私を含めて歴史を専門としない者には碑文の読み方を学ぶ機会がほとんど無い。本書のような日本語で読めるローマの碑文学入門書が出版されるのは初めてではないだろうか。実にありがたいことである。

第3章には碑文解読の入門的な知識がまとめられている。字体、略語、人名について、また、石材に合わせてスペースを省略する方法として合字(繋がった文字)が紹介されている。
この章の数詞について解説している部分には貨幣にも関係する面白いことが書かれている。貨幣単位のセステルティウスをHSと書くだが、それがIISから来ているというのだ。セステルティウスは1/4デナリウスなのだが、1デナリウスは当初は10アスであり(後に16アスになる)、1セステルティウスは2.5アスに相当する。Iはローマ数字でお馴染みの1、Sはsemis(半分)の略なので、IISは1+1+0.5=2.5になる。アルファベットと数詞を区別するためにIISの中段に横線を引いたものがHSになったのだ(IとIの間に横線を引いてみるとはっきりする)。

4章から6章までは碑文の年代測定のこと、どのようにして碑文が失われていったかについて、また、集められた碑文の記録と出版の歴史が扱われている。
第7章から第17章までは分野別に碑文からどういうことが分かるかを実例をあげて解説している。各章それぞれ実に興味深い内容である。

第17章にAVG(アウグストゥス)の複数形をAVGGなどと書くのがディオクレティアヌスの頃から始まったように読めるところがあるが、セウェルス朝の頃の実例を見たことがあるので、たぶん何かの誤りだろう。また、一部に誤植はあるが(アントニウス・ピウスと書いてあったりする^^)、そういう細かい誤りを差し引いても素晴らしい本なので全てのローマファンにお勧めしたい。


第1章 序―歴史を塗りかえる碑文
第2章 石切職人とその技術
第3章 碑文の解読法
第4章 碑文の年代推定
第5章 碑文の残存
第6章 記録と出版
第7章 碑文における皇帝
第8章 地方と社会
第9章 ローマへと続く道
第10章 ローマ帝国の運営
第11章 軍隊と前線
第12章 神々の神殿と祭壇
第13章 墓石と記念物
第14章 交易、経済と商業
第15章 POPULUSQUE ROMANUS
第16章 キリスト教
第17章 最後のローマ帝国
第18章 結論―碑文の価値

投稿者 augustus : 2006/08/05 17:05 | コメント (0) | トラックバック (1)

2006年07月30日

古代ローマ歴代誌―7人の王と共和政期の指導者たち

古代ローマ歴代誌―7人の王と共和政期の指導者たち
フィリップ マティザック(著), 東 真理子(翻訳)
創元社 (2004-09)
¥ 3,780
ISBN:4422215183

ローマ建国からの7人の王、それから共和政時代の有力者たちの事績を時代順、人物別に記述した本。
王政期や共和政初期については伝説上の話も多いのだが、伝説の陰に隠された真実についても考察している。中期になるとスキピオ、ファビウス、大カトー、グラックス兄弟など多くの興味深い話を残した有名人が目白押しである。共和政末期には内乱と政争の中にどろどろした人間模様を見ることができるだろう。

図版も多くて読みやすい。各人物の物語を楽しむのも良いし、共和政人物事典として有効に活用することもできる。

投稿者 augustus : 2006/07/30 05:59 | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年07月24日

多文化空間のなかの古代教会―異教世界とキリスト教〈2〉

多文化空間のなかの古代教会―異教世界とキリスト教〈2〉
保坂 高殿
教文館 (2005-11)
¥ 2,625
ISBN:4764265885

同著者の『ローマ史のなかのクリスマス―異教世界とキリスト教〈1〉』の続編となる本で、帝政後期における主に一般信徒の宗教意識を詳しい資料とともに紹介している。
古代のキリスト教徒に対しては、「大迫害にもかかわらず堅固な信仰を守った人々」というイメージを持ちがちであるが、本書を見ると帝政末期の信徒たちはむしろ多神教的宗教意識を持ち司教たちが教化に苦労していたようだ。

第1章では教会会議決議その他の文献資料から、そういう異教に宥和的な信徒の姿を浮かび上がらせている。
例えば、永遠の命をキリスト教の神に願い、現世的で一時的なものをダイモーン(異教の神々)に祈願する信徒のことをアウグスティヌスが記述している。また、世俗的公務はもちろん、異教神官職までも兼ねる教会聖職者がいたことがわかり興味深い。

第2章では墓碑や壁画、彫刻に見られる一般信徒の宗教意識の分析である。これも異教的意識とキリスト教的意識が混在していることがわかりやすく説明されている。
例えば、D(is)M(anibus)「黄泉の神々へ」という異教墓碑の定型句がキリスト教徒の墓にも多数使われているのだ。また、ローマのいくつかのカタコンベにはオルフェウス・キリスト像が見られる。オルフェウスという異教神は死んだ妻エウリュディケーを追って黄泉に下り、ハーデースを魅了・呪縛してもう少しで妻奪還に成功するところだった。これがキリストの死に対する勝利と二重写しになったらしい。

エピローグの章も興味深い。感銘を受けた記述を2つ挙げておく。
『キリストもまた四世紀以降の諸皇帝にとっては「神々」の序列に入る、他の神々と並ぶ一人の神、しかしその配下に教会という堅固な組織を持つがゆえに利用価値の非常に高い一人の神であった。』
『社会はゆっくりと、そして表層的にキリスト教化する一方、逆に教会は異教化の方向に向かって一歩後退二歩前進を繰り返してきた。』

投稿者 augustus : 2006/07/24 12:20 | コメント (0) | トラックバック (1)

2006年07月11日

共和政ローマとトリブス制―拡大する市民団の編成

共和政ローマとトリブス制―拡大する市民団の編成
砂田 徹(著)
北海道大学出版会 (2006-03)
¥ 9,975
ISBN:4832965611

トリブスというのは簡単に言ってしまえば共和政ローマの民会における投票単位であるのだが、その他にも戸口調査や徴兵などの単位でもあり、『古代ローマ人にとってその社会生活・政治生活の基本単位』であったようだ。有力者たちは地盤となるトリブスの拡大に努めたり、身分闘争の時代にはトリブスを通じて平民の説得にあたったりもしたらしい。

この本はトリブスについて詳しく論じたもので、こういうものが日本語で読めるのは実にありがたいことである。個人的には第3章と第4章が特に興味深く読めた。ローマの民会の仕組み等を知らない人には理解が困難な内容だが、各章の表題を見て面白そうだと感じる人は手にとってみると良いだろう。

 序章 課題と研究史
 第1章 ローマ市民団の拡大とトリブス
 第2章 初期トリブスの内部構造―「身分闘争」との関連で
 第3章 共和政中期における有力政治家のトリブス操作
 第4章 共和政末期の選挙不正とトリブス
 第5章 審判人とトリブス―トリブニ・アエラリィの再検討を中心に
 第6章 都市トリブス再考―「トリブスから移す」とは何か
 第7章 都市トリブスとローマ市民団の周縁―解放奴隷・役者・非嫡出子
 終章 帝政期におけるトリブスの変質

投稿者 augustus : 2006/07/11 21:12 | コメント (0)

2006年03月19日

ゲルマンとダキアの戦士―ローマと戦った人々

ゲルマンとダキアの戦士―ローマと戦った人々
Peter Wilcox(著), Gerry A. Embleton(彩色画), 斉藤 潤子(翻訳)
新紀元社 (2001-05)
¥ 1,050
ISBN:4883178722

ゲルマン人と言えばローマ帝国末期の大移動が有名であるが、ローマは共和政の時代からゲルマン人と戦ってきた。AD9年にはトイトブルクでローマの3個軍団が全滅するなど、ゲルマン人はローマの強力な敵であった。
ダキアはトラヤヌス記念柱にその征服が描かれていることで有名である。

そんなゲルマン人とダキア人の戦士たちの装備服装などをわかりやすく解説した本である。オスプレイ社の他の本と同様に彩色画が美しく、見ていて楽しい。

投稿者 augustus : 2006/03/19 19:34 | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年03月12日

キリスト教の興隆とローマ帝国

キリスト教の興隆とローマ帝国
豊田 浩志(著)
南窓社 (1994-02)
¥ 8,155
ISBN:4816501304

3世紀後半のキリスト教勢力のローマ帝国支配階層への進出過程を論じたもの。

第1章、第2章は支配階級でのキリスト教徒の進出状況が論じられている。属州総督や元老院議員の階層ではキリスト教徒はあまり多くなかったようだ。元老院階級に次ぐ支配階級である騎士身分のキリスト教徒もそう多くはないが帝国東半分で増加していたらしい。また、第1章は3世紀後半が帝国支配に騎士身分が重用された時代であったことを教えてくれる。

第3章はとても興味深い。皇帝フィリップス・アラブスがキリスト教徒であったという説を紹介し、その当否を検討している。

第4章、第5章はウァレリアヌスとその子ガリエヌスの対キリスト教政策を論じている。両者の政策は一見対照的だが帝国東部の支配権確保という見方をするとわかりやすいらしい。

「目から鱗」という感じがするところや、「え。そんなことがあったの。」とびっくりしながらも面白く読めるところが多くあった。
特に第3章に少しだけ書かれているゴルディアヌス3世戦病死説がとても興味深い。普通、ゴルディアヌス3世は次の皇帝フィリップス・アラブスに無慈悲に殺されたとされているが、実はペルシャ軍との戦争で負った傷がもとでの戦病死なのだそうだ。詳しくは著者の別論文に書いてあるそうなので、いずれ読んでみたいと思っている。

続きを読む "キリスト教の興隆とローマ帝国"

投稿者 augustus : 2006/03/12 08:43 | コメント (2) | トラックバック (0)

2006年03月05日

アルバのアスカニオ

Mozart: Ascanio in Alba
Wolfgang Amadeus Mozart(作曲),
Jacques Grimbert(指揮), Budapest Concerto Armonico 他
¥ 1,862

アスカニオは有名なアエネアスの息子で、アルバを建国した。ローマを建国したロムルスは彼の子孫である。

アルバ建国などの歴史的な話はほとんど含まれていなく、アスカニオとその許嫁を讃え、婚礼を祝う内容である。15歳のモーツァルトの作曲したオペラで、ハプスブルグ家の大公の婚礼祝いのために書かれた 。わずか15歳でこんなオペラを作ることが出来るとは、やはりモーツァルトは天才だ。

あらすじについては以下のページが参考になる。
http://www7.airnet.ne.jp/art/ez2/o/work/Ascanio/1.html

投稿者 augustus : 2006/03/05 10:58 | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年02月27日

ガリアとブリテンのケルト騎士 ― ローマと戦った人々

ガリアとブリテンのケルト騎士
― ローマと戦った人々

Peter Wilcox(著), Angus McBride(彩色画), 桑原 透(翻訳)
新紀元社 (2000-12)
¥ 1,050
ISBN:488317834X

オスプレイ社のメンアットアームズシリーズの1冊。シリーズの他の本と同様に美しい彩色画と豊富な考古学資料を用いて当時のケルト戦士たちの様子を教えてくれる。ケルト人はローマの強力な敵であり、紀元前390年には彼らにローマ市を占領されているほどである。

表紙の真ん中の戦士はほぼ丸裸である。
異様な感じもするが、「紀元前3世紀になるまでケルト人は非常に小さい甲冑を使い、多くの戦士は裸で戦うことを好んでいた。」ということだそうである。

投稿者 augustus : 2006/02/27 19:29 | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年02月18日

カルタゴ戦争 ― 265BC‐146BC ポエニ戦争の軍隊

カルタゴ戦争
265BC‐146BC ポエニ戦争の軍隊

テレンス ワイズ(著), リチャード フック(彩色画), 桑原 透(翻訳)
新紀元社 (2000-10)
¥ 1,050
ISBN:488317820X

カルタゴは共和政ローマにとって最強の敵だったと言って良いかもしれない。特に第2次ポエニ戦争ではハンニバルが登場してローマを存亡の危機に立たせることになる。

この本は双方の軍隊について編制、武器、装備などを美しい彩色画とともに詳しく解説する。スペインなどカルタゴ側の傭兵として戦った部隊についても興味深い解説が書かれている。

投稿者 augustus : 2006/02/18 20:30 | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年02月05日

共和制ローマの軍隊 - 200BC‐104BC 地中海の覇者

共和制ローマの軍隊 
 200BC‐104BC 地中海の覇者

Nick Sekunda(原著), Angus McBride(彩色画), 鈴木 渓(訳)
新紀元社 (2001-12)
¥1,050
ISBN:4775300288

オスプレイ社のメンアットアームズシリーズの中の一冊。共和政ローマの軍隊について、美しい彩色画、考古学的資料の写真とともに分かりやすく解説している。特に武器などの装備に詳しい。
映画などで目にするローマ軍は重装備で圧倒的な強さを感じさせるが、実際の共和政時代のローマ軍は意外に軽装備なのだ。

手に取った人はこの本の薄さに驚くかもしれないが、ローマ軍に興味のある人は手元に置いて損はない。

余談になるがタイトルの「共和制ローマ」は「共和政ローマ」の誤り。気になって google で検索してみると 共和制ローマが569件、共和政ローマが640件ヒットした。誤りが1人歩きして本物に迫っている。

投稿者 augustus : 2006/02/05 14:21 | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年01月21日

Cleopatra

Cleopatra
Carl Heinrich Graun, George Frideric Handel, Johann Adolf Hasse, Johann Mattheson
Tafelmusik Baroque Orchestra, Isabel Bayrakdarian(Soprano)

¥ 2,282

ヘンデルなど4人のバロック音楽の作曲家によるオペラの中から、クレオパトラを扱ったアリアを集めたCD.

当時は古代ローマ、ギリシャへの関心が高まっており、古代をテーマにしたオペラもいろいろ書かれている。クレオパトラもメジャーな古代人なので取り上げやすかったのだろう。
ヘンデルの「エジプトのジュリオ・チェーザレ」からも3曲が収録されている。やはり聴いた感じが有名なオンブラマイフに似ている。

個人的には JOHANN MATTHESON 作曲の Cleopatra の中の Gute Nacht が実に美しくて気に入っている。バロックのオペラを聴く機会はあまり多くないのだが、たまにはこういうのを聴くのも良いものだ。

投稿者 augustus : 2006/01/21 14:55 | コメント (0) | トラックバック (0)

2005年12月18日

ROME TOTAL WAR (輸入版)

ROME TOTAL WAR (輸入版)
対応OS:Windows98/Me/2000/XP
価格:オープンプライス
AMAZONでの価格:¥8,316 (税込)
発売 2004/09/22


ユリウス家、エジプト王家などの勢力の中から一つを率いて 古代の地中海世界を統一しようという戦略シミュレーションゲーム。戦術級の個々の戦いもリアルに楽しむことができる。

参考のために攻略サイトを紹介しておく。
http://pc.gamespy.com/pc/rome-total-war/551582p1.html

投稿者 augustus : 2005/12/18 09:07 | コメント (0) | トラックバック (0)

2005年12月04日

西洋法制史料選 1 古代 (1)

西洋法制史料選 1 古代 (1)

創文社 (2004-03)
¥ 6,825
ISBN:4423740370

古代ローマの法に関する一次史料を和訳し、原文と解説もつけたもの。
ローマの法だけでなく政治的な動きについても大いに参考になる史料がまとまっていてありがたい。内容は以下の通り。

1. 王法
2. 十二表法
3. パトリキとプレーブスの身分闘争に関する史料
4. 共和政務官表
5. 不法徴収返還請求に関するアキーリウス法
6. 土地法(前111年)
7. 神皇アウグストゥス業績録
8. ウェスパシアーヌスの命令権に関する法律
9. 属州行政に関するプリーニウスの書簡
10. 永久告知録
11. ガーイウス 法学提要
12. アクィーリウス法とそれをめぐる法学説の展開
13. 引用法(426年)
14. テオドシウス法典
15. ローマ法大全

特に興味深いのは「パトリキとプレーブスの身分闘争に関する史料」の部分。権力闘争の結果が法律に現れてくるところなどがローマ人らしくて面白い。

投稿者 augustus : 2005/12/04 12:10 | コメント (0) | トラックバック (0)

2005年11月27日

ローマ史のなかのクリスマス―異教世界とキリスト教〈1〉

ローマ史のなかのクリスマス―異教世界とキリスト教〈1〉
保坂 高殿(著)
教文館 (2005-10)
¥ 2,625
ISBN:4764265877

本書はクリスマスの起源を明らかにすることを目指して書かれている。クリスマスは4世紀初頭に不敗の太陽神の祝祭から借用されたものという説明が以前から為されてきていたが、それだけだと、なぜ4世紀初頭になって初めてクリスマスがキリスト教会に導入されたのかが不自然である。本書はそういう問題も含めてなるべく多くの資料を引用しながらわかりやすく説明してくれる。

古代ローマの多くのキリスト教徒は、キリスト教に改宗した後もそれまでの多神教的生き方を変えたわけではなかった。現世的利益を願って異教の神を拝し、異教の祝祭に喜んで参加する人たちであった。異教の祝祭へ行って教会へ来なくなる多くの信徒をどうするかが教会指導者には大問題であり、その解決策として渋々導入されたのがクリスマスをはじめとするキリスト教の祝祭であったらしい。
クリスマスは当時盛んだった太陽神の祝祭から信徒を取り戻すためものであった。だから太陽が復活する冬至の頃に行われる。信徒にもキリストを「真の太陽」とか「新しい太陽」と説明して、異教的祝祭からキリスト教的祝祭へと導いたのであった。

こういう説明はきっぱりと異教に決別した信仰心篤いキリスト教徒をイメージすると大きな違和感があるが、多神教的枠組みの中に生きておりなおかつ普段はそれすらも意識しない我々多くの日本人には納得しやすいもののように思う。当時のローマ帝国のキリスト教徒もきっとよく似た感じ方をする人たちだったのだろう。

投稿者 augustus : 2005/11/27 12:40 | コメント (0) | トラックバック (1)

2005年11月23日

ガーイウス法学提要

ガーイウス法学提要
佐藤 篤士(翻訳), 早稲田大学ローマ法研究会(翻訳)
敬文堂 (2004-09)
¥ 5,775
ISBN:4767001021

ユスティニアヌスの「ローマ法大全」に採り入れられ、後の世のローマ法に多大な影響を残した「法学提要」の邦訳。

著者のガイウスは2世紀頃の法学教師だったらしい。「法学提要」は生徒に法律を教える教科書として書かれたもののようである。だから、比較的分かりやすく、分量もそう多くないから読みやすい。

もともとは単なる教科書だから法源としての力はなかったのだが、5世紀にはテオドシウス2世とウァレンティニアヌス3世の勅法によって、ガイウスなど5人の法律家の意見が法律同様の効果を持つようになった。
そして6世紀、ユスティニアヌス帝の命令でローマ法大全が作られたが、法学提要にはガイウスの内容も含まれ、彼の名は不朽のものとなった。

中身は法を人、物、訴訟についてのものに分類して扱っている。読んでみると法律を巧みに運用していたローマ人の姿が想像され興味深い。

投稿者 augustus : 2005/11/23 17:17 | コメント (0) | トラックバック (0)

2005年10月10日

レトリック式作文練習法―古代ローマの少年はどのようにして文章の書き方を学んだか

レトリック式作文練習法―古代ローマの少年はどのようにして文章の書き方を学んだか
香西 秀信(著), 中嶋 香緒里(著)
明治図書出版 (2004-11)
¥ 2,415
ISBN:4185224168

ヨーロッパで17世紀頃まで行われていたプロギュムナスマタ(予備練習)と呼ばれたレトリックの訓練方法を現代に利用可能なように再構成したもの。

ローマの上流階級の子供たちが学ばなければならない重要な学問がレトリック(弁論術、修辞学)である。4世紀末のアフトニウスによると、プロギュムナスマタは寓話、物語、逸話、格言、反論、立論、共通論拠、賞賛、非難、比較、性格表現、描写、一般論題、立法弁論という風に段階に分けて、少しずつ訓練されていく。この本では古代、中世に行われていたものを縮小して再構成することが試みられている。したがって、必ずしも古代の子供たちの勉強方法のままとは言えないわけだが、その雰囲気は味わうことができて興味深い。
真面目に練習すれば説得力も増しそうである。

投稿者 augustus : 2005/10/10 16:47 | コメント (0) | トラックバック (0)

2005年10月02日

イソップ風寓話集

イソップ風寓話集
パエドルス(著), バブリオス(著)
国文社 (1998-01)
¥ 4,515
ISBN:4772004041

イソップの名は誰もが知っており、「寓話におけるホメロス」とも称せられている。紀元前6世紀頃のトラキア出身の奴隷で、後に解放されたとされるが、彼の生涯の詳しいことは不明である。

本書はパエドルスとバブリオスがイソップの寓話と自分の創作を詩の形で刊行したものである。パエドルスはアウグストゥスの奴隷だったが解放され、アウグストゥスやティベリウスの家で家庭教師をしていたらしい。バブリオスがいつの人なのかは難しい問題のようだが、1世紀末には彼の寓話詩集が完成していたらしい。
いずれも単に教訓を与えようとするのではなく、読者を楽しませようとする作品である。もちろん現代の読者が読んでも楽しい作品になっている。「きつねと葡萄」などのおなじみの寓話も多数収録されている。

パエドルスの寓話の中にはティベリウスの親衛隊長であったセイヤヌスを批判したらしいものもあるそうで、興味深い。

投稿者 augustus : 2005/10/02 19:30 | コメント (0) | トラックバック (0)

2005年09月23日

ローマ人の物語 (20) 悪名高き皇帝たち[四]

ローマ人の物語 (20) 悪名高き皇帝たち[四]
塩野 七生(著)
新潮社 (2005-08)
¥ 460
ISBN:4101181705

おそらく全ローマ皇帝の中で最も有名なネロを扱った分冊。

ローマの大火の後、キリスト教徒を処刑したことからキリスト教会から憎まれ、その後2000年間悪名が轟いているのがネロである。義理の弟や実母を殺させたりするなどの悪行も弁解はできない。歌手としてステージに立ったり、首都を放っておいてギリシャに巡業に出かけたりといった為政者に相応しくない行為もあった。
著者はネロに同情的なようだ。母殺しもやむを得なかったように書くし、ローマの大火の後、ドムス・アウレアの建築を始めたのもネロ個人のためだけでなく、市民のためのものであったと説く。しかし、大ローマ帝国を統治するには、少々甘い判断力しか持っていなかったようだ。結局、ネロは見捨てられ自殺することになる。

巻末には詳細な年表があり、ティベリウスが皇帝の後継者になってからネロの死までが書かれている。

投稿者 augustus : 2005/09/23 11:01 | コメント (0) | トラックバック (0)

2005年09月20日

ローマ人の物語 (19) 悪名高き皇帝たち[三]

ローマ人の物語 (19) 悪名高き皇帝たち[三]
塩野 七生(著)
新潮社 (2005-08)
¥ 420
ISBN:4101181691

「悪名高き皇帝たち」の第3分冊。第4代皇帝クラウディウスを扱っている。

クラウディウスは悪妻たち解放奴隷たちの言いなりになっていた皇帝というイメージもあるが、著者はオスティアの港湾工事や元老院議員の資格をガリア人にまで広げたことなどを高く評価し、解放奴隷の重用にも理解を示している。

クラウディウスの最大の弱点であろう悪妻の言いなりになりがちだった点はスエトニウスやタキトゥスなど古代の人と著者の意見は一致しているようだ。しかし、悪妻メッサリーナやアグリッピーナの醜聞についてはあまり詳しく書かれていない。アグリッピーナによるクラウディウスの毒殺についても極あっさりとした記述で済ませている。きっと著者はクラウディウスの悪妻たちについての有名すぎる逸話は書く気にならなかったのだろう。クラウディウスに興味を持ったなら、スエトニウスなど他の本も読んでみて欲しい。

投稿者 augustus : 2005/09/20 21:04 | コメント (0) | トラックバック (0)

2005年09月19日

ローマ人の物語(17),(18) 悪名高き皇帝たち[一],[二]

ローマ人の物語 (17) 悪名高き皇帝たち[一]
塩野 七生(著)
新潮社 (2005-08)
¥ 460
ISBN:4101181675

ローマ人の物語 (18) 悪名高き皇帝たち[二]
塩野 七生(著)
新潮社 (2005-08)
¥ 420
ISBN:4101181683

[一」と[二]の前半は第二代皇帝ティベリウスを扱っている。
ティベリウスは偽善的、陰気だと言われ、タキトゥスやスエトニウスが書き残した元老院との確執、晩年の性的スキャンダルもあり、評判が良いとは言えない。しかし、著者はティベリウスを本音で生きようとした「冷徹なプロフェッショナル」として好意的に描く。アウグストゥスが築いたローマ皇帝という地位を確固たるものにしてリレーした地味だけど有能な皇帝がティベリウスだと言うのには賛成だ。

[二]の後半は古来から狂気の皇帝と言われるカリグラだ。スキャンダルに事欠かない皇帝だが、著者は彼をモンスターでもなく頭も悪くなかったと評する。愛馬を執政官にしようとした有名なエピソードも著者によれば元老院を馬鹿にしたちょっとした冗談だったとされる。実際どうなのかはわからないが面白い見方であることは間違いない。

続きを読む "ローマ人の物語(17),(18) 悪名高き皇帝たち[一],[二]"

投稿者 augustus : 2005/09/19 07:34 | コメント (0) | トラックバック (0)

2005年09月12日

ローマ皇帝歴代誌

ローマ皇帝歴代誌
クリス スカー(著), 月村 澄枝(翻訳), 青柳 正規(監修)
創元社 (1998-11)
¥ 3,465
ISBN:4422215116

個性豊かな歴代皇帝の生き方、業績、周囲の人々について記述することで帝政ローマの歴史を概観しようとする本。

慎重に権力を固めていった皇帝もいれば、ハチャメチャな浪費で有名な皇帝もいる。人格を讃えられた皇帝もいれば、親殺し兄弟殺しなどで批判された皇帝もいる。その地位は決して安泰ではなく、殺された皇帝も多い。そんな様々な皇帝の生き方を身近に感じさせてくれる本である。図版も多く、記述もバランスがとれており、お薦めの一冊。当サイトも大いにこの本を参考にしている。

投稿者 augustus : 2005/09/12 21:56 | コメント (0) | トラックバック (0)

2005年08月13日

ユダヤ人とローマ帝国

ユダヤ人とローマ帝国
大沢 武男(著)
講談社 (2001-10)
¥ 735
ISBN:4061495720

ナチス・ドイツや中世に顕著に見られる反ユダヤ人思想は古代ローマ時代に源を遡ることができる。本書はどのようにして反ユダヤ人思想が形成されてきたのかを解明しようとしている。

ローマ時代以前から、ユダヤ人は一神教を固く守り、他民族と摩擦を引き起こしてきた。一方で、自分たちの存在を守るため共和政ローマに接近し、その保護を受けてきた。
帝政期に入ってもユダヤ人は独自の宗教とその律法の慣習に従って生きる権利を認められてきた。ネロやハドリアヌスの時代の反乱で、神殿を失ったり、エルサレムから追い出されたりし、危険で警戒すべき民族という印象をローマの支配者層に与えてしまった。しかし、帝国側からのユダヤ人迫害は散発的、限定的なものであって、帝国は基本的にはユダヤ人を保護していたようだ。

最初期のキリスト教徒はほとんどユダヤ人であった。異邦人たちにキリスト教が受け入れられていき、福音書が成立するころまでにユダヤ人はキリスト殺しであるという考え方が作られたようである。
キリスト教がローマの支配的宗教となると、教会側から反ユダヤ的教会法がかなり出されている。ユダヤ人でありユダヤ教の慣習の中で生きているキリスト教徒もまだいたようだが、キリスト教会は彼らをユダヤ教の慣習から切り離し、ユダヤ教徒をキリスト教徒から隔離しようとしたようである。
ユダヤ教徒をキリスト教に強制改宗させようとする動きまで出てくる。

古代末期の教父であるアウグスティヌスの考え方を本書は以下のように書いている。
ユダヤ人の罪業を絶えず意識している教会にとってユダヤの民は「教会の敵」であるが、同時に彼らはキリストの真を証明するための「教会の下僕であり奴隷」なのであって、ユダヤ人が祖国なき流浪の民として四散したのも、キリスト教が世界万民に広がり、至るところで発展するために定められたことだという。ユダヤ民族の惨めな状態における生存、存続こそが、教会のための「証」であり、「奉仕」であるとされたのである。
「民族全体でキリスト殺しの罪を背負って惨めに生きてろ」ってことだろうが、怖い考え方である。このキリスト教会側の考え方で反ユダヤ思想が決定的になったのだろう。

投稿者 augustus : 2005/08/13 13:50 | コメント (0) | トラックバック (0)

2005年07月31日

グラディエイター―古代ローマ剣闘士の世界

グラディエイター―古代ローマ剣闘士の世界
ステファン ウィズダム(著), 斉藤 潤子(翻訳), アンガス マックブライド(彩色画)
新紀元社 (2002-06)
¥ 1,890
ISBN:4775300903

古代ローマの剣闘士について、その装備、生活などを豊富な図版とともに詳しく解説している。
剣闘士の試合はローマ世界で大人気のショーであった。一口に剣闘士と言っても、観客を飽きさせないため、種類の異なるいろいろな剣闘士がいる。トラキア剣闘士とか魚人剣闘士等々、言葉だけで説明されてもよく分からないが、鮮やかな彩色画を見ながら解説を読むと分かりやすいものである。

映画のシーンなどでは試合に負けた剣闘士は、偉い人が親指を下に向ければ殺され、親指を上に向ければ助けられている。しかし、この本によるとそれは逆らしい。
歴史学者たちは観客が死を宣告する指の仕草について長年議論を重ねてきた。現在は、親指を突き上げた拳と共に「斬り殺せ」と叫べば処刑し、親指を下げれば武器を置いて放免したと考えられている。
このように結論した根拠は書かれていないが、その点についての研究史も知りたいものである。

投稿者 augustus : 2005/07/31 09:51 | コメント (0) | トラックバック (0)

2005年07月23日

戦争で読む「ローマ帝国史」 建国から滅亡に至る63の戦い

戦争で読む「ローマ帝国史」 建国から滅亡に至る63の戦い
柘植 久慶(著)
PHP研究所 (2005-07-01)
¥ 580
ISBN:4569664172

ローマ帝国の歴史を戦争を通じて読みとろうとする本。

確かに、ローマの歴史は戦争の連続であり、ローマの歴史を戦争を通じて読みとろうというのは面白いテーマであろう。しかし、一方で歴史は戦争だけで動くわけではないので、この本でローマの歴史を知ろうというのは無理である。この本を読むなら、ローマの戦争の物語を気楽に読むという姿勢が良いと思われる。

また、残念ながら内容の誤りがあちらこちらに見られる。
例えば、ローマ市民をその資産によって第1階級、第2階級などの階級に分けそれぞれの階級毎に武装を定めた話をタルクィニウス・プリスクス王に帰している。おまけに、このタルクィニウス王は息子の不祥事で追放されて王政が終わったなどという大間違いが書かれているのだから、他の部分の記述も正しいのかどうか心配になってしまう。
また、ローマを戦争を通して見る本が、ポエニ戦争で「ローマの盾」ファビウスについて何一つ記述しないというのは、いかがなものだろう。第2次ポエニ戦争のローマの勝利には、ファビウスの働きが大きく貢献していると思うのだが。
他にもいろいろあるので、史実を知りたい人には、この本の内容を鵜呑みにせず、他の本と照らし合わせることを強くお勧めしたい。

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投稿者 augustus : 2005/07/23 17:34 | コメント (0) | トラックバック (0)

2005年07月18日

古代のエンジニアリング―ギリシャ・ローマ時代の技術と文化

古代のエンジニアリング―ギリシャ・ローマ時代の技術と文化
J.G. ランデルズ(著), 宮城 孝仁(翻訳)
地人書館 (1995-11)
¥ 3,150
ISBN:4805205008

古代ギリシャ、ローマの技術に工学的見地から光を当てようとする著作。著者は古典学の学者だが、執筆にあたって工学や考古学の専門家の協力を得ている。古代の著作に書いてあることや考古学的発見の紹介にとどまらず、内容を工学的に検証しているところが大変興味深い。訳者、監訳者はいずれも工学畑の人で、工学的に正しい用語、内容表現を心がけたとのことである。

内容は
第1章 動力とエネルギー源
第2章 水の供給と処理
第3章 揚水機(ポンプ)
第4章 クレーンとウィンチ
第5章 カタパルト
第6章 船と海上輸送
第7章 陸上輸送
第8章 理論的知識の進歩
第9章 技術に関するギリシャ・ローマの主要な著述家

各章ともそれぞれ興味深いテーマを扱っているが、最も面白く感じたのが第6章である。軍船として帆船よりガレー船が扱いやすかった理由や、ガレー船の速度の推測などが興味深い。ガレー船は意外に速くて、現代のレース用8人乗りボートと同じくらいのスピードが出るのだそうだ。

投稿者 augustus : 2005/07/18 21:18 | コメント (0) | トラックバック (1)

2005年07月10日

ローマ帝国とキリスト教

世界の歴史〈5〉ローマ帝国とキリスト教
弓削 達(著)
河出書房新社 (1989-08)
¥ 893
ISBN:4309471641

切っても切れない関係のローマ帝国とキリスト教。この本はローマ帝国をキリスト教の単なる背景としてではなく、「ローマ帝国」と「キリスト教」をどちらも主役として扱おうとしている。

建国から大帝国になるまでのローマの記述も面白く読めるが、初期キリスト教について書いてあるところが特に面白い。
例えば、イエスはユダヤの大評議会で死刑判決を受けるが、死刑の決定権はユダヤ総督ピラトがもっていた。ピラトはイエスが無罪だと思っていたが、死刑にせざるを得なくなる。なぜ、ピラトはイエスに死刑判決を下さざるを得なかったのだろうか。その理由がわかりやすく書いてある。
後の時代にパウロもユダヤ総督のところに連れて行かれるが、そのときの総督も政治的に不安定な立場にあって、かなり困ったらしい。

ローマ帝国とキリスト教の関わり合いについてはディオクレティアヌスとかコンスタンティヌスの時代のことが重要なのだが、紙数の問題か、この部分については記述があっさりしている。

投稿者 augustus : 2005/07/10 11:40 | コメント (0) | トラックバック (0)

2005年07月09日

古代ローマを知る事典

古代ローマを知る事典
長谷川 岳男(著), 樋脇 博敏(著)
東京堂出版 (2004-09)
¥ 2,940
ISBN:4490106483

「3日でわかるローマ帝国」がローマが発展した理由、大帝国を維持できた理由にスポットを当てているのに対し、「古代ローマを知る事典」はローマ人の生活に大きな焦点が当てられている。

第1章では史料の分析の仕方について説明している。同時代の人の著作だからといって書いてあることをそのまま信じるわけにはいかない。書いた人の立場によるフィルターがかかっている場合も多いし、何度も繰り返し写本が作られていくうちに写し間違いだって起きるのだ。この章は短いが、私を含めて歴史を専門に学習したわけではない人々にはとてもためになる内容を含んでいる。

第2章、第3章では主に制度的な事が取り扱われている。第4章は通史、第5章はローマが大帝国になった理由を考察している。

第6章から第8章までで、人口、寿命、ライフサイクルを取り扱っている。この3つの章が最も面白い。
共和政ローマでは戸口調査が行われていたが、共和政末期には定期的には行われなくなってしまい、アウグストゥスが復活させたが、定着しなかった。だから、人口を調べるのも容易なことではないのだ。
寿命については、エジプトに残っている戸口調査の記録、「ウルピアヌスの生命表」と呼ばれる法史料、墓碑銘、発掘された骨などから推測するようなのだが、これもなかなか大変なことだ。その推測によると、ローマ人は生まれて1年以内に3割以上が死亡し、5歳の誕生日を迎えることができるのは半分くらいしかいないのだそうだ。

第9章ではローマの経済について書いている。 特に興味深かったのは、グリーンランドの氷の層に含まれる鉛や銅の量を時代毎に測定したグラフだ。ローマ時代はかなりの量の金属成分が検出されるが、それを越えるレベルになるのは、産業革命の頃になってからなのだそうだ。ローマ時代に鉱業が盛んであったことがとてもよくわかる。

この本は結論だけを書かずに専門外の人にもわかるように推論の理由を説明してくれている。歴史の学び方を示唆してくれているようで、実に素晴らしい本である。

投稿者 augustus : 2005/07/09 19:01 | コメント (0) | トラックバック (0)

2005年07月07日

3日でわかるローマ帝国

3日でわかるローマ帝国
阪本 浩(著)
ダイヤモンド社 (2001-12)
¥ 1,470
ISBN:447892032X

この本はローマがいかにして小さな都市国家から発展して大帝国を築くことが出来たか、そしてその大帝国をいかにして維持することが出来たのかという疑問に答えようとする本である。
2ページから3ページ毎に小さなテーマを建て、簡潔にわかりやすく答えている。分かりやすい図も添えられており、まるで黒板を見ながら講義を聴いているかのようである。
「3日でわかる」というのもまんざら誇張ではない。飽きっぽい人でも一気に読んでしまうことができるだろう。

惜しむらくは、3世紀の危機までは丁寧に説明が続けられているのだが、ディオクレティアヌス以降は駆け足になってしまっている。末期のローマ帝国にも興味深いテーマはあると思うので、続編を期待したい。

投稿者 augustus : 2005/07/07 22:35 | コメント (0) | トラックバック (0)

2005年07月03日

図説 古代ローマの戦い

図説 古代ローマの戦い
エイドリアン ゴールズワーシー(著), 遠藤 利国(翻訳)
東洋書林 (2003-05)
¥ 4,725
ISBN:4887216084

タイトルから有名な戦いにおける戦術を論じたものと予想する人もいるだろうが、そうではない。

ローマの歴史は戦争の歴史と言ってもよいくらいに、彼らは多くの戦争を戦ってきた。
この本は時代によって大きく変化したローマ軍について書いている。ローマがどのような軍隊をどのような意図で編成したか、武器はどのようなものだったか、どのような敵とどのように戦ったかなどを多くの図や写真とともに読むことができる。

軍人皇帝時代に簒奪者が多く出た理由の考察や、 末期になると会戦向けではなく小規模な戦争向けの軍隊になっていくことなども分かりやすく書いてあり、大変興味深い本である。

投稿者 augustus : 2005/07/03 18:12 | コメント (0) | トラックバック (0)

2005年06月30日

プリニウス書簡集―ローマ帝国一貴紳の生活と信条

プリニウス書簡集―ローマ帝国一貴紳の生活と信条
国原 吉之助(著)
講談社 (1999-03)
¥ 1,418
ISBN:4061593676

ドミティアヌス帝からトラヤヌス帝の頃に活躍した元老院議員プリニウスが残した書簡集。
内容は公的な仕事に関するものから、私的生活に関するものまで様々で、家族を思いやる様子や友人との交流などもわかり興味深い。

管理人augustusが特に興味を持ったのはトラヤヌス帝との往復書簡。この頃、プリニウスはビチュニア属州の総督として赴任していた。属州統治に関しての皇帝への問い合わせと回答を読むと、ローマ帝国の支配の仕組みが見えてくるようで大変面白い。
例えば、トラヤヌス帝の時代もキリスト教は禁止されていた。しかし、告発されても本人が皇帝像を拝みキリスト教徒でないことを示せば放免された。また、匿名の告発は受け付けず、わざわざ信者を捜して罰するようなことも行われていなかったのだ。

投稿者 augustus : 2005/06/30 18:38 | コメント (0) | トラックバック (2)

2005年06月28日

食卓歓談集

食卓歓談集
プルタルコス(著), 柳沼 重剛(翻訳)
岩波書店 (1987-10)
¥ 693
ISBN:4003366433

対比列伝で有名なプルタルコスが宴席での楽しい会話を記録したもの。(あるいはそういう形式で書いたもの。)
取り上げられるテーマは気楽で興味深いものが多い。 例えば、「鶏と卵ではどちらが先か」、「なぜ塩は神聖だと考えられるのか」、「酒席で哲学談義をしてもよいか。」等々、どこから読んでも楽しめるだろう。

投稿者 augustus : 2005/06/28 18:54 | コメント (0) | トラックバック (0)

2005年06月27日

年代記―ティベリウス帝からネロ帝へ

年代記―ティベリウス帝からネロ帝へ〈上〉
C. タキトゥス(著), Cornelius Tacitus(原著), 国原 吉之助(翻訳)
岩波書店 (1981-01)
¥ 987
ISBN:4003340825
年代記―ティベリウス帝からネロ帝へ〈下〉
C. タキトゥス(著), Cornelius Tacitus(原著), 国原 吉之助(翻訳)
岩波書店 (1981-01)
¥ 945
ISBN:4003340833

ティベリウス、カリグラ、クラウディウス、ネロの4皇帝の時代の出来事を年代順に綴っている。表現は劇的で、陰謀渦巻く時代を生き抜いた人々を生き生きと描き出している。 スエトニウスと違い、ゴシップを無批判に書いたりはしないので記述の信頼性が高く、この時代の第1級の史料である。

著者のタキトゥスは1世紀半ばに生まれ、1世紀おわり頃には執政官の地位に登り詰める。年代記は2世紀の始め頃に書かれている。

投稿者 augustus : 2005/06/27 18:56 | コメント (0) | トラックバック (2)

2005年06月26日

ローマ皇帝伝

ローマ皇帝伝 上
スエトニウス(著), 國原 吉之助(翻訳)
岩波書店 (1986-08)
¥ 840
ISBN:4003344014

ローマ皇帝伝 下
スエトニウス(著), 國原 吉之助(翻訳)
岩波書店 (1986-09)
¥ 987
ISBN:4003344022

騎士階級出身のスエトニウスの2世紀初め頃の著作。

原題は De Vita Caesarum Libri VIII (カエサルたちの伝記八巻)で、共和政最後の英雄ユリウス・カエサルと、帝政を始めたアウグストゥス、そしてその後の10人の皇帝ティベリウス、カリグラ、クラウディウス、ネロ、ガルバ、オト、ウィテリウス、ウェスパシアヌス、ティトス、ドミティアヌスの合計12人のカエサルたちを扱っている。ユリウス・カエサルからネロまではカエサルは家名だが、彼らと家系上のつながりの無いガルバ以降の皇帝もカエサルを名乗ったので、カエサルは皇帝の称号の一つに変化したと考えられる。だから、「カエサルたちの伝記」を「ローマ皇帝伝」と訳したのも納得できる。

内容は皇帝が個人的に関わった様々なことで、ゴシップや迷信深い記述も多く、タキトゥスに比べて信頼度は低いかもしれない。しかし、迷信深さも当時の人の気持ちを知る手がかりになるし、ゴシップもそういう話を人々が信ずるような背景があることを示す貴重な資料である。

"Twelve Caesars" という言い方を良く見かけるが、スエトニウスが皇帝伝で扱った12人のことを指している。

続きを読む "ローマ皇帝伝"

投稿者 augustus : 2005/06/26 18:52 | コメント (0) | トラックバック (1)

2005年06月24日

私のプリニウス

私のプリニウス
澁澤 龍彦(著)
河出書房新社 (1996-09)
¥ 612
ISBN:4309404839

古代ローマの大博物学者プリニウスが残した大著「博物誌」について、雑誌「ユリイカ」に連載した記事をまとめたもの。
現代から見るとプリニウスの書いたことにはほとんどでたらめと言って良いものも多いのだが、古代の人が天文・地理、動植物、鉱物、薬物、人間文化についてどんなことを知っていたのかが分かって非常に興味深い。(例えば、「雷は雲と雲の摩擦によって生ずる」などという記述には驚かされる。)

「博物誌」の全和訳も出版されているので、さらに興味を持った人は入手を検討すると良い。
プリニウスの博物誌 全3巻

投稿者 augustus : 2005/06/24 18:58 | コメント (0) | トラックバック (7)

2005年06月23日

羅和辞典

羅和辞典
田中 秀央
研究社 (1966-10)
¥ 4,935
ISBN:4767490243

古代ローマで使われていた言語がラテン語だ。ローマ史ファンなら、ときどきラテン語の単語を調べたいことが出てくるので、手元に羅和辞典が一冊あると便利である。
英語が得意な人なら Latin-English Dictionary の方が良いかもしれない。もっと安いものがたくさん出版されているのだ。

投稿者 augustus : 2005/06/23 18:55 | コメント (0) | トラックバック (0)

2005年06月22日

アグリッピーナ物語

アグリッピーナ物語
弓削 達(著)
河出書房新社 (1985-03)
¥ 378 (1990年再版のものは420円)
ISBN:4309401104

ネロの母である小アグリッピーナの人生を描いた一冊。
夫クラウディウス帝を毒殺し、母子相姦を迫ってネロをコントロールしようとしたアグリッピーナは古くから稀代の悪女とされてきたが、弓削氏は同情的に彼女を描く。 彼女の人格形成に大きく影響したであろうティベリウス時代からの宮廷内のいろいろな陰謀についてもかなりのページを割いており参考になる。

投稿者 augustus : 2005/06/22 18:47 | コメント (0) | トラックバック (0)

2005年06月21日

グラディエーター (DVD)

グラディエーター
リドリー・スコット(監督), ラッセル・クロウ, ホアキン・フェニックス, コニー・ニールセン, オリバー・リード,
DVD (2005/04/08) ¥1,565
ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン

ローマ軍の尊敬を一身に集めるマキシマス将軍が、奴隷の身に落とされ、妻子を殺されて、生きる意欲を失っていく。惰性のまま闘技場で戦っていくが、いつか復讐を目指し真剣な戦いをはじめる。

見所としては、冒頭の戦闘シーンは迫力満点で、まず見るものの心を引きつけてしまう。個人的には闘技場での戦車弓兵部隊との戦いがスリル満点で素晴らしいと思う。敵役のコンモドゥスを演じたホアキン・フェニックスも良い味を出している。

素晴らしい映画だが、史実ではコンモドゥスは父帝を殺していないし、円形闘技場で死んだわけでもない。マキシマス将軍も実在のモデルはいない。と、いうわけで、史実と混同することなく、フィクションとして楽しんで貰いたい映画だ。
第73回アカデミー賞で5部門受賞。

投稿者 augustus : 2005/06/21 18:34 | コメント (0) | トラックバック (0)

2005年06月20日

共和政ローマの寡頭政治体制―ノビリタス支配の研究

共和政ローマの寡頭政治体制―ノビリタス支配の研究
安井 萠(著)
ミネルヴァ書房 (2005-03)
¥ 7,140
ISBN:4623042669

共和政ローマでのノビリタス支配がどのようにして成立し崩壊したのかを論考している。

管理人augustusが特に興味を持ったのは第2章と第3章で、共和政ローマでの政務官の選挙のメカニズムを取り扱っている。以前はクリエンテスがパトロネスのために投票したので、多くのクリエンテスを持つ者が当選したように思っていたのだが、そんな単純なものではないことがわかる。また、クアエストルからはじまる政務官の序列も最初から固定されていたわけではないことも教えてくれる。

第4章の最後の方では共和政ローマで貨幣が担った宣伝効果についても書かれており、ローマコインファンとしては嬉しい。(ちなみにコインについては Roman Republic Coinage を主に参照しているようだが、この本はかなり高価なのだ。)

投稿者 augustus : 2005/06/20 18:01 | コメント (0) | トラックバック (2)

2005年06月19日

コインの考古学―古代を解き明かす

コインの考古学―古代を解き明かす
Andrew Burnett(著), 新井 佑造(翻訳), 小山 修三(監修)
学芸書林 (1998-09)
¥ 1,890
ISBN:4875170459

ローマコインに限った本ではないのだが、全てのローマコインファンにお薦めしたい本である。
古代コインに興味を持つと、「どうやって年代を調べるのだろうか?」とか、「どのように作っていたのだろうか?」など、様々な疑問が出てくる。ローマコインの日本語の解説書というものはないのだが、この本はローマコインも含めて古代から中世のコインを調べることでどういうことがわかるかを教えてくれる。結論だけでなく、方法論も面白い。

投稿者 augustus : 2005/06/19 19:05 | コメント (0) | トラックバック (3)

西洋古代史料集

西洋古代史料集
古山 正人(翻訳), 田村 孝(翻訳), 本村 凌二(翻訳), 中村 純(翻訳), 毛利 晶(翻訳), 後藤 篤子(翻訳)
東京大学出版会 (2002-04)
¥ 2,730
ISBN:4130220187

一次史料を読むのは大切なことだけど、どんなものがあるのか探すのも大変、和訳されていなければ読むのも大変。
この本はギリシャ、ローマ時代の様子を知るのに役立つ様々な一次史料のうち、おいしい部分を和訳している本。コンパクトにまとまっており、一般のローマ史愛好者や高校生にもお薦めできる。

投稿者 augustus : 2005/06/19 18:55 | コメント (0) | トラックバック (0)

古代ローマ人名事典

古代ローマ人名事典
ダイアナ バウダー(編集), 小田 謙爾(翻訳), 荻原 英二(翻訳), 兼利 琢也(翻訳), 長谷川 岳男(翻訳)
原書房 (1994-07)
¥12,600
ISBN:4562026057

王政時代の伝説上の人物も含めて、古代ローマ1200年間の人物に関する情報が一冊にまとまった事典。非常に便利。

投稿者 augustus : 2005/06/19 18:33 | コメント (0) | トラックバック (1)

ローマ帝国の神々―光はオリエントより

ローマ帝国の神々―光はオリエントより
小川 英雄(著)
中央公論新社 (2003-10)
¥780+税
ISBN:412101717X

ローマで大流行した東方からの宗教について取り扱った本。
どんな宗教がローマに入っていったのか。 なぜ、東方からの新しい宗教が人気を得たのか。
そんな疑問に答えてくれる一冊。初期のキリスト教についても取り扱っている。

投稿者 augustus : 2005/06/19 18:19 | コメント (0) | トラックバック (1)

Roman Coins and Their Values

Roman Coins and Their Values vol.1
David Sear(著)
Spink & Son Ltd (2000-06-30)
£45.00
ISBN:190204035X

Roman Coins and Their Values vol.2
David Sear(著)
Spink & Son Ltd (2002-06-06)
£65.00
ISBN:1902040457

Roman Coins and Their Values vol.3
David Sear(著)
Spink & Son Ltd (2005年発行)
£42.75
ISBN:1902040694

第1巻は共和政からフラウィウス朝まで、第2巻は五賢帝からセウェルス朝まで、第3巻はマクシミヌス・トラクスからカリヌスまでのコインを扱っている。 発行された主なコインを年代順、材質順に整理したもので写真も多く、眺めているだけで楽しい。コインの大体の評価額も載っているのでローマコインを収集する人にはとても役に立つ。

現在入手できるローマコインの本の中で、この本は最もコストパフォーマンスが良いと思う。次に出る第4巻で完結の予定で、その刊行が待ち遠しい。

投稿者 augustus : 2005/06/19 17:52 | コメント (0) | トラックバック (4)

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古代ローマ (ローマ帝国の歴史とコイン)
古代ローマ (ローマ帝国の歴史とコイン)
 
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